野球肘Q&A

3.原 因

多くの原因がありますが、代表的な3大ポイントは以下です。

  • 投球フォーム
  • 投球数
  • 1年の間に非投球時期が存在しない

3.1. 投球フォーム

フォーム

小学生の時期に100点満点のフォームで投動作を行う事は、関節弛緩性の高さや筋の未発達などにより困難(不可能に近い)です。しかしながら早い時期から正しいフォームを理解したり習得したりしようとする事が、野球肘や将来の野球肩など(投球傷害症候群)を減らす手掛りになります。また指導者や保護者の方々など、子供達に接する方々が正しいフォームを理解していただくことも重要です。

正しいフォームとは、故障が少ない事と速いボール(いい球)の両方を兼ね備えます。その為にはコンディショニングと同時に、フォームの仕組みも大切です。正しい投動作では、下肢(脚)→腰→体幹→肩→肘を上手に連続して使う事が必要になります。これを運動連鎖といいます。通常フォーム不良があると、運動連鎖が断ち切られるのでそのストレスが体のどこか(上肢)に掛かってきます。

下肢や体幹の動作(エネルギー)をウデに伝える事が出来なければ、ウデに頼って投げる事になりますので、フォーム不良≒手投げとも言えます。小学生高学年の時期には上記に加えて、骨端核の脆弱期でもありますので、力学的なストレス(負担)は肘関節に集中してしまうのです。

※投球フォームにおいて注意すべきポイント

 

  

3.2. 投球数

投球数

たとえ正しいフォームで投動作を行っていたとしても、投球数自体が多すぎるとやはり力学的なストレス(負担)は増えます。正しいフォームで投動作を行う事が出来る成人が100球程度全力で投球を行った場合、関節の中ではにじむ様な出血が必ず発生します。MRIや関節鏡などにより確認されています。私も研修で見せて頂いた機会がありましたが、出血で「まっかっか」でした(投球障害には罹患していない=なっていない選手)。

しかしその状態は、「投球障害」には至っていません。当日や翌日に「だるくて重い感じ」がする程度です。通常は「ハリ」や「重さ」として翌日に感じます。「ハリ」や「重さ」は、関節を休ませてあげれば回復します。ひと晩で回復する事も珍しくありません。ところが、その状態を繰り返すと関節を構成している組織などが瘢痕化(*はんこんか)してしまうのです。

子供の場合、関節などは成人よりも脆弱ですので、投球障害に至っていなくてもある程度の投球後には関節に何らかのダメージが発生していると考えるべきです。当然、投球数が増えすぎればそれだけ関節を痛めてしまい、結果的には投球障害を発生してしまう事に繋がります。

 

 

※日本臨床スポーツ医学会が1994年に発言した
「青少年の野球傷害に対する提言」を参考にして下さい。

 

(*瘢痕化:火傷や外傷・潰瘍などの治ったあとにできる傷あと。組織の欠損部に増殖した肉芽組織が古くなって繊維化したもの。)

 

  

3.3. 1年の間に非投球時期が存在しない

オーバヘッド・モーション

現在の少年野球に関する環境は異常事態と言っても過言ではありません。投球数・年間試合数などは大学の上位チームよりも小中学生の方が多いのです。大学の選手が決してやらないような練習を小中学生が行っている事は、決して珍しい風景ではありません。
日本の大学野球では2シーズン制(春季リーグ&秋季リーグ)が一般的です。アメリカでの2シーズン制では2009年から、シーズンを重ねて野球を行わない事=春季と秋季の両方のシーズンで野球を行わない事、となりました。尚且つ1年につき少なくても2~3ヶ月(出来れば4ヶ月)の間、一切投げない事と言うことも定められました。

同じ動作を反復しすぎる事は、ストレスを受けた成長軟骨が回復する時間が不足する事になります。これは1週間単位でも(小学生の時期には今日投げたら明日は投げない)、年間単位でも言える事です。

さらには特にプレゴールデンエイジやゴールデンエイジにおいて、同じ種目のみを実施する事のネガティブ面もあります。この時期には運動能力(神経)を満遍なく育ててあげる事が本来あるべきコーチングですが、野球なら野球・サッカーならサッカーだけを行うと運動神経は満遍なく育ってくれません。
その様な場合、大人になってから恵まれた環境でしか自分の能力を発揮できない選手になってしまう可能性が高まります。保有能力と発揮能力共に支障をきたすのです。特に現在の少年スポーツでは、競技性を求める(追求する)あまりに練習内容がまるで大人の練習のように画一的になってしまっています。その結果、そのスポーツの特異性が追求されすぎてしまっています。

子供の運動神経(運動能力)を広く育ててあげる為には、様々な動作を体験経験させてあげる事が必要なのです。